パターン化する裁判

究極は過払い訴訟でしょうが、業界を見渡すと、どの裁判もパターン化しますね。

最高裁判例が出ると、そこに規範として記された内容のとおりの手順で、請求を組み立てるのは、司法という作用がもともとそのようなものですから、ある意味当然と言えば当然なんでしょう。

また、業界の先達が後進に裁判のポイントを説明するときにも、その都度説明内容が変わらないように、定型化していくことは、目的から考えて当然です。

すると何が問題かというと、規範というのはスタートライン、要件事実というのはあくまでも、骨、でしかない訳で、そこにどうやって具体的な事実関係の血肉を添えていくかというのが、具体的な事件を担当する弁護士の仕事だということが理解出来ていない人が多いのではないかという気がするのです。
今の新司法試験にそのような能力を求めていないことは明らかです(それ以前に法律の素養すら怪しい)。

で、何が問題かというと、CMさえすれば、客がわんさか集まって、その客を捌くためだけに、定型化することが正義であると考えてしまった弁護士が、過払いの終焉と共に、その他の訴訟でも同じことを画策しだしたということです。

元々、どんな裁判でも、その道の先進と呼ばれる弁護士が居て、試行錯誤を経て、現在の裁判にたどり着いたのに、一足飛びにその形だけ真似しようとして、似ても似つかない裁判を繰り返し、いつしかその裁判が間違った主張であるかのように変わっていく。
私は過払いの訴訟でそのことを経験しました。
闇雲に信義則を振りかざす弁護士によって、本来救済されるはずの被害者が救済できず、そこに金さえ手に入れば良いという弁護士が闖入してきたことで、もう完全に裁判所に見放されました。

昨日、弁護士会の委員会に出席しました。私は金融サービス部会というところに参加しています。金融商品取引で、現在は主にストラクチャードファイナンスにおける裁判事例を扱っています。オプションを組み込んだ株式と債券の非等価交換を内容とするもので、複雑にすることで、投資家に対し、その不当性を認識させにくくするものです。
上記の説明を見てもおわかりのとおり、意図的に複雑にしている金融商品取引ですから、その問題性を指摘すること、特にその内容を、金融商品取引だけを日常的に取り扱っているのではない裁判所裁判官に当該事件限りで、説明するためには、金融商品取引の専門性を最低限知識として保有した上で、その本来の役割とどれだけかけ離れているかを、素人という前提で、裁判所に示さないといけません・・・が、この分野においても、「適合性」「説明義務」などのキーワード化された規範にしたがって訴状を作れば良いんだろうという傾向が見受けられます。無論、要素としてはそうでしょう。
しかし、その裁判の分野においても結果を出す弁護士と、そうでない弁護士が居ます。同じ研究会に所属し、同じ経歴をもっていても、違いは生じるのです。
これらの違いは、視点をどこにおいているか、つまり、最高裁の規範をゴールと考えるか、スタートと考えるかの違いだろうと推測します。

そして、残念ながら、この裁判、本来的には面倒くさいくらい難しく、知識の習得に時間を要するはずの専門性の高い、この裁判にもCM弁護士は乱入しようとしています。
理由は、投資被害の金額の多さです。着手金だけでも相場で言えば、過払いなどの非ではなく、交通事故の死亡事故相当額になるからだろうと思われます。
業界全体が沈んでいくのは時間の問題ですね。

追伸
朝事務所に来て、メールを開いたら、そこにアペンタクルの強制執行だけお願いできますか?
アペンタクルに対し、執行を想定している訳ではなく、どちらかというと役員の責任を追及したいかなと思っているのです。
その前段階の手続も含めると、しかも栃木県宇都宮地裁が管轄になると思われますので、ちょっとした旅行になってしまう訳です。どこまでアペンタクルが抵抗するかにもよりますし、最後まで抵抗するかもしれませんし、裁判所も今となっては過払い大好き弁護士だと思って敵対してくるかもしれませんし。
京都・大阪だったら、私のことはほぼ知っていてくださる裁判官が多いのですが、関東なんて、ほぼ私のこと知らないでしょうから、なんで京都の弁護士が過払い欲しさに乗り込んでくるんだ的発想しかないかもしれません。

アペンタクルに過払いのある人は他の業者にも過払いはあるわけで、そっちは簡単であるが故に別の弁護士のつまみ食いでしょ?で、残された分だけ、やって欲しい、でも費用を払う以上は結果を出して欲しい、ってババだけ引かされる理由はないんですよ。
可能性だけはありますが、結果の約束の出来ない手続があって、その手続はおそらく私にしか出来なくて(方法を知らないという意味で)、その手続をダメもとでもやってみるための費用という考え方が出来なければ、しない方が良いです。
私も要らない恨みを買いたくありません。

再度追伸
気になっている武富士の裁判ですが、先ほど「武富士の責任を追及する全国会議」という団体のページに、明日の再開期日というのが掲載されていました。
結審しようとして、忌避申立になって、判断が終わって、「合議」というのは忌避の言い分が通ったために裁判官の変更があったということなのでしょうか?それとも当初から合議のままで、忌避と即時抗告の判断が間に入ったために、期日の指定の取消があって、結審のために再開したということでしょうか?
分からない。でもそのまま行けば、もうすぐ判決だったので、少なくともあと3ヶ月は判決なさそうなんですね。
で、どこが一番最初に結審・判決になるのでしょう。

未だにどうやったら借り主の請求が認められるのか、全く分かりませんけどね。