武富士の裁判が無理だと思っている理由

明けましておめでとうございます。
無茶な裁判をして、敗訴したら裁判官が悪いなどという弁護士にならないよう、今年も精進したいと思います。

武富士の役員に対する裁判ですが、根拠は会社法の第429条です。
法律の世界には、特別法が一般法に優先するという考え方があります。
より、射程範囲の狭い法律は、立法当初から、その外側を規律する一般法の存在を認識しながら、特にその射程範囲に関して特別な法律を定めたものであると理解されることから、その特別法が優先すると考えられているのです。

同じことが、武富士の役員を訴えている裁判にも当てはまると私は思っています。
では、何が特別法なのか?
さすがに今の時点で言っちゃったら、武富士代理人が喜ぶだけでしょう。


もう、ほとんど暴露しているようなもんですが。
会社法の直接損害に基づいて、原告が勝訴することがあるとすれば、武富士の取締役が、個々の原告個人を直接認識し、何が何でも、そいつに損害を与えようと考えて行動した場合、すなわち、加害行為につき、積極的な故意、それも、未必では足りず、直接の害意を必要とすることになるのではないかと思います。
これはどう考えても現実的ではありません。おそらく原告と被告らは面識すらないでしょう。
横浜地裁判例のような事例もあるとお考えでしょうが、高裁で覆った理由も上に原因があると思っています。
東京高裁はなんとなく、感覚的に、原審の判決を維持しちゃいけないんだなという認識で理由が不十分なままの判決でした(理由は相当に不十分だと思います)。だからこそ、今後の同種の裁判を邪魔する要素にはならないのかなと胸をなで下ろしているところです。
願わくば、上告するなら、理由不備くらいの上告受理申立にしていただいて、平成18年の最高裁判決に違背するなどという理由は避けてもらえると嬉しいなと思うのです。
最高裁に、はっきりと、理由を付けて、借り主の請求は認めないと言われた日には、取締役の責任を追及する訴訟がそれこそ、前途をたたれてしまいます。

なので、会社法を根拠にする場合には間接損害によらざるを得ないと思うのですが、この場合にもやはり、上と同じ障碍にぶち当たるのだと思います。
まだ、直接損害の主張より幾分マシだと思うのは、可能性が年末ジャンボ宝くじの一等を宝くじ1枚だけ買って当選する確率の1万分の1くらいは残されていることではないでしょうか。
もちろん、貸金業法43条の適用がないことを知りながら、利息制限法を守らなかった、だとか盗聴して逮捕された、などという理由が役員の責任根拠として通用するとは思っていません。
もう何度も言いましたけどね。

もうすぐ広島地裁での判決出るんじゃないでしょうか。証拠調べも文書提出命令もばっさり切り捨てたということですから、理由付けはおそらく、私が想定している内容と一致するような気がします。
事実認定の問題すら不要な判断になるのです。だから、その道は歩いちゃいけないと警告した訳です。