いろいろ

取引履歴の証拠保全事例、アップしてみました。多分全国初の事例のはずですが、日時は分かるようにしてますので、もっと古い事例があれば、教えてください。「全国初」の文字は取ります。
保全決定のアップしかしません。当事者個人名以外はほぼ全部残してありますが、これは、決定だけではほぼ何もできないからです。申立の理由は自分で考えてください。

以前のブログで何度か指摘したことですが、任意整理というのは、個人再生手続が存在する場面では、ほぼ利用される場面はありません。
過払い取り返したら借金より多くなった、という事例ならともかく、それ以外の事例では、債務の総額が115万円前後以下でないとまず使い道がありません。
ところが、世の中の弁護士・司法書士・その他の非弁活動においては、個人再生手続よりも任意整理の方が重宝されております。これは多重債務者に対する重大な背信行為ですが、その事実を指摘したがらないのです。

まず、任意整理よりも、個人再生の方が多重債務者にとってメリットが大きいのはなぜか。
自分が現在保有している資産よりも債務の方が多いので、こうした法律上の清算手続を採ることになるわけですから、債務の総額を返済するという場合、今ある資産を全て返済に回して足りない分を将来の収入から支払う事になるわけです。
任意整理というのは、債務総額(完済までの利息をどうするかという問題は一旦置きます。)を分割して支払うことになるので、返済額=債務総額です。
ところが、個人再生手続というのは、返済の上限が、持っている資産の総額(あまりにも少ない場合には上限は5分の1か100万円のうち多い方ですが)を超えることはありません。つまり、始めから資産がない状態であれば、任意整理など、将来の収入で債務返済の総額をまかなうということになりますから、債務総額が100万円を超える限り、上限が100万円になる個人再生の方が返済総額は少ない訳です。もちろん、個人再生手続を債務者自身が申し立てるというのは至難の業でしょうから、代理人等に依頼することになります。この費用が平均的に30万円なのです。冒頭の115万円というのは任意整理にしても、大体15万円前後の費用が掛かるので、この差額分と債務返済上限100万円を債務が超えない限り、個人再生のメリットはないということになるのですが、債務額がその金額を下回るケースなどほとんどない、というのが実務上の感想です。
これに対し、任意整理の選択の方が個人再生に比べて生じるメリットというのがありません。本当にありません。強いて言えば、再び借金できるようになるクレジットブラック解消の時期が2,3年早まるという話も小耳に挟んだりはしますが、それが「本当にメリットか?」と考えてもらう必要があるでしょう(再び多重債務になると余計深刻になるだけの話)。
以上のとおり、任意整理に比して個人再生の持つ優越性は圧倒的です。なので、個人再生の件数よりも任意整理の件数の方が多い弁護士というのは100%悪徳弁護士だと断じて間違いありません。

では、なぜ個人再生よりも任意整理を選択する弁護士がいるのでしょう。
一つには、作業効率が任意整理の方が良いということです。大体の債務者が5社〜10社の債権者に対しお金を借りています。任意整理は、これらの債権者と個別に返済条件を新たに合意することを言いますが、債務者が返済できるかどうかも考えずに、機械的に分割で返済しますという合意であれば、1社5分ないし10分でけりがつきます。つまり、一人の依頼者につき掛ける時間は1時間、多くても2時間ということになります。
もっとひどいケースになると、合意できないと放り投げて、後は自分でやっといて、という弁護士・司法書士もいます。

これに対し、個人再生手続ではそうはいきません。裁判所に提出する報告書、私はかなり早い方だと思いますが、それでも1時間は聞き取りから清書まで掛かります。これに家計収支表の作成の指導、債権調査と債権者一覧表の作成、財産の調査と財産目録の作成、のべ時間にして7時間〜9時間くらい掛かっていると思います。つまり個人再生事件1件を処理する間に、任意整理3件以上を処理するならば、弁護士にとって、同じ時間で得られる対価は任意整理の方が多いということになるのです。
もっとひどいケースで言えば、任意整理における債権者との交渉は労働対価の低い事務員にやらせてしまえば、その差額は一層広がります。弁護士の数は数えるほどなのに、なぜそんなに事務員がいるのか「うちは債務整理の事件数が全国有数です」とほざいている弁護士事務所のからくりは、ほぼ上記のとおりです。
で、これだけでも債務者にとっては十分有害ですが、さらに悪質な事例になると「減額報酬」というのが出てきます。
貸金業者がそしらぬ顔で借り主に請求している貸金残高は、既にご承知のとおり、本来請求できない違法な金利を含むものですから、それこそ馬鹿でもサルでも、取引履歴の引き直し計算によって、実際の債務額は本当はもっと少ないという指摘は出来ます。貸金業者自身だって、自ら裁判を起こす時には、裁判所には借り主に説明していた金額とは別の金額が本来の債権ですと説明します。弁護士の中には、この減額報酬というのをそれこそ、債務額が減ったのは私のおかげだと債務者に説明し、請求する輩がおります。参考までに、私の場合、HPの費用をご覧頂ければおわかりのとおり、任意整理の必要性がそもそも存在する事例で、債権者が取引をごまかし、そのごまかしを正すために特段の労力を要求された場合でないかぎり、この減額報酬を請求することはしていません。
ところが、個人再生手続の場合、債務の総額どころか、返済の総額自体が、減額になるのは、法制度の当然の前提ですから、そのような手続を採ることに伴う必然の効果に、報酬請求などできるはずもありません。債務額が5分の1になる(債務総額が500万円を超えている場合で、この5分の1の金額が元々保有している財産よりも多い場合です)から、5分の4を減額した報酬請求などできるでしょうか?請求している弁護士はあまり聞きません。
つまり、個人再生手続ならそもそも生じない減額報酬をそれらしい名目をつけて自分の懐を肥やすために、任意整理を弁護士が選択することがあるのです。
このようなケースでは、まず元々任意整理の返済すら危ういところへ、弁護士の報酬まで(しかも払えなくなるのが分かっているから、自分の報酬だけは先取りしようとします)重くのしかかり、まず、その後にもう一度相談があり、今度は破産するしかないね、という話になります。

次に司法書士の場合ですが、司法書士が任意整理を選択するのは上記の悪徳の場合の他に、司法書士固有の原因が存在します。再生委員の予納金です。
司法書士が個人再生手続を申し立てた場合、裁判所によっては、再生委員を任命し、再生計画が適正に設定されているかどうかを調査するということをする場合があります。このために再生委員の予納金を納めるよう求められることがあります。この金額が15万円〜30万円くらいのはずです。するとどうなるでしょう。弁護士申立の場合には不要となる予納金を司法書士の場合には要求されるということになると、債務者は弁護士に流れていってしまう。
そこで、あなたの収入では個人再生は出来ないですねなどと平気でウソをつき、自分の手元に依頼者を残そうとするので、任意整理が選択されるのです。心当たりのある債務者は結構多いと思います。

最後に、その他の非弁活動ですが、これはもちろん、裁判所に出て行く資格がないので、始めから法廷外でしか何もできないのですから、他に選択の余地がないのです。

上記のいずれにも共通しているのは、債務者のことなどまるっきり考えていないということです。

さあ、下の広告を出している弁護士・司法書士をよく見てみましょう。
私の言っていることがよく分かるのではないですか?
元々、広告が問題なのではないのです。多重債務者といっても一人一人の事情は異なるので、スケールメリットを活かす余地も、画一的処理が出来る訳でもないのです。本来マスコミュニケーションによる広告のメリットが存在する業界ではない(生産量が増えれば、商品あたりの製造コストが下がり、利益が増える訳ではない)にも関わらず、このようなことが率先して行われるのは、やってはいけない画一処理を弁護士以外の労働対価の低い人員にやらせた上に、取れるはずもない「減額報酬」を請求するために、多重債務者の利益など考えもしない手続を選択するからです。
あくまでも問題なのは、広告宣伝費が一体どこから出ているか、最終的には多重債務者が支払う報酬から出ているのですが、その広告費用は広告により顧客が集中するスケールメリットで吸収できない以上、そうした事務所に依頼する借り主は、より多くの負担を強いられているという現実です。