商品の差別化

ネガティブな発言はネガティブな思考を生み、ネガティブな思考は、他人の評価をネガティブにしますので、他人の批判に終始するのは、私にとってもマイナスです。
今日は、激動する弁護士の業界において、事務所の方向性について、です。

まず、弁護士というのは、全て等しく裁判に関する基本的で十分な能力を持っていると思われがちですが、現実には、そうではありません。
私が業界で上位クラスか、というと比較のしようもないので(裁判で対立する相手方代理人ですら、事件の性質による原告、被告の制約を受けますので)、言及のしようもないのですが、画期的と評価される判例を量産している事実を、評価していただければ、と思います。
この判例につき、事件の概要だけの公開にとどめ、一切判例そのもの、まして準備書面など公開しないことが、一部の弁護士の反感の対象になっていることは承知しておりますが、弁護士にとって、事件処理のノウハウは唯一の提供商品であり、その商品の競争力を維持するのは、営業の当然の行為です。
弁護士が「営業」という言葉を使うことに違和感をお持ちの方もおられると思いますが、どの業界においても同じことであり、弁護士だけが特別な訳ではありません。

私が、弁護士登録から10年、最も比重の大きかった業務は、今のように「過払いバブル」と揶揄される前から多重債務の事件であり、過払いは、弁護士の金ヅルという認識ではなく、多重債務者の選択肢を広げるため、という理由でその妨害行為に対して、熱意をもって取り組んだ結果が、HPにも公開している判例です。

あまり嬉しくない理由ですが、こうした事件の比重は減っています。
今は事業者、境界紛争、相続など、一時前の町の弁護士の事件構成になっています。
もちろん、多重債務の事件の比率が一番高いことは時世なのでしょうが。

そんな業態の中で、今後10年あるいはもっとになるかもしれませんが、弁護士の世界にも「提案型」のセールスというものが要求されるようになるでしょう。

こういう提案型のセールスに馴染むのは、事業展開している企業です。
本来であれば、大企業が率先して、社会の変化に対応すべきと思いますが、いわゆる大手製造メーカーを中心とした企業は、自分達の都合で法制度そのものを変えることに慣れてしまっていますので、それが出来なくなっています。
私が提案型セールスの対象にしているのは、中小企業です。
これから到来するであろう社会にいち早く対応していただくために、自分の見通しを告げ、その見通しに共感を頂ければ、それに適合するように企業の構造を順応させていくための構造改革を行うことを内容としています。
まだ、話がスタートしたばかりですが、二社ほど興味をお持ちいただいていております。

また、価値観の多様化が進む現代、市場も細分化しますし、急速に変化もします。
もう大企業が世に憚る時代ではありません。
その市場の変化に追いつけないと大企業の方がなまじ、損益分岐点が高いだけに、崩れるのも早いと思います。
大企業が崩れると、その傘下の企業は全て連鎖します。

未だにそのリスクに気付いていないのは残念ですが(一部の電器メーカーが報道を賑わせていることを見ているのに)、明日は我が身という認識を持っていないのは残念です。

今時代に必要とされているのは「スリム化」です。トップダウンにせよ、ボトムアップにせよ、情報の伝達を早くしなければ、時代の変化に対応できません。市場の需要を察知してから商品の市場投入までの時期が早くなければ、生き残れない時代です。
リストラクチャリングという言葉を日本の経営者だけが誤解しています。
労働力を自社の都合に合わせて調整するために正規雇用の比重を減らして、非正規にシフトし、非正規使い捨てをリストラと呼んでいるのは、日本だけです。
本来構造改革が必要なのは、無駄に存在する中間管理職です。中間管理職を解雇するのではなく、別の方法で負担を資源に変える取り組みが要求されます。

この提言に共感いただき、私の提言に耳を傾けてくれる人が少しずつですが、現れていることに手応えを感じていますが、まだ試みは始まったばかりです。
私は、そのサービスを説明し、対価を受領するだけですが、実際、そのリスクの大半を受けるのは経営者ですから、生じるリスクを予期して回避するための提言を出来るだけ多く行うこと、受容できるリスクの上限をあらかじめ決めておくこと、など併せて提言していきたいと思います。