他人の判例の批評

基本、発言の内容に責任取れないという理由で、私は自分の判例以外の批判・批評はしないし、したくない。

今回の投稿は大きな声の独り言である。

最高裁平成28年2月26日付の判決において、民法第910条の解釈を最高裁として示したことを知った。

事案の概要はおいておくが、要するに、子供であることの認知を得ていない子供がいて、相続人から外されたまま、相続につき分割協議終了

その後認知の訴えにより遺産分割から外された子供の訴え認められる。
910条はすでに処分の行われた権利関係に影響を及ぼさずに、認知の効力が出生に遡るとされている784条と条文の文理上衝突するかのような記載となっている?。
784条により、認知の訴えが認められた子供はしたがって当初から相続人であったことになるが、同条の但し書きにより遺産分割は終わったのだから、分割のやり直しを求めることが出来ず、910条に基づいて価格で代償を受け取ってくださいという規定になっている。

この代償価格の基準時をめぐっての紛争が上記最高裁の事例である。

最高裁は、価格代償の訴えを起こした時点だと判示したわけだが、紛争が最高裁まで持ち込まれるのは当然理由があって、相続開始時と提訴時、口頭弁論終結時で、相続財産の評価額が大きく動いていて、実に提訴時には相続時の半分以下だったらしい。
そりゃ認知されなかった子供怒るでしょう。

最高裁は910条を784条の本文と但し書きと間で生じる不都合の調整機能として、「創設的な効果」を規定している条文だと評価したらしい。
けどね、その場合、認知の訴えにより当初から相続人であったことが認められたら、相続回復請求権(884条)による時効の適用がそもそもあるのか不明だが、910条の請求を行う時期は相続財産目録の評価を見て考えろって話だよね?
請求の時期によって金額変わるんなら、本裁判以降、弁護士は相談を受けて910条の価格代償請求を行う場合でも、権利消滅期間内において最善の評価額の時期を狙えということ?
行為者の請求の時期によって権利内容が変わるなんて法的地位を不安定にすると言っているに等しい。

909条との調整はどうするんだ?
910条は別に784条と矛盾する規定だとは思わないよ。その意味で相続開始時が正しくて、構造上は善意の不当利得者と同じなのだから、請求時に利益が現存していなければ、義務者は返還義務を負わないでよかったはずだ。
逆に私生児がいることは知っていたけど、認知されてないから、今のうちに分割しちゃおうぜ、という話になったら、その価格の変動のリスクは認知を受けない子供が負うべきなのか?
悪意の利得者でいいじゃないか。

本判決における法律解釈はどうも釈然としない。