日常の事例を紹介するということ

弁護士は守秘義務がありますし、当然他人の高度にプライバシー性のある事情を扱うことになります。
得意げに、本人のプライバシーを披露すれば、それだけで懲戒理由となります。

しかしながら、この秘匿性、匿名性を逆手に取り、有りもしない「成功例」をいかにも紹介し、私は有能な弁護士ですという宣伝をする人が相当数存在いたします。それはまるで、何の効果もないダイエット食品の「成功者の声」と同じです。

どれがそうでどれが違うと言えるのか、と反論されるでしょうが、そういう奴を説得しないといけない理由はありません。
ただ、市民には疑いの目をもって臨んで欲しいということです。
無論、私に対しても同じだけの厳しい目でもって臨んでいただいて欲しいのです。こういう糾弾発言をするから、きっと私は違うんだろうみたいな発想も不要です。
現実にディベートの世界で、仮想敵を設定することで、その仮想の相手方に一般民衆が賛同を示さない価値を代表せしめて、それをやり玉に挙げることで、自分はその賛同と共感を得るという方法がありますので。

こういう手口が残念ながら、弁護士・司法書士の広告の業界に存在するからこそ、私は自分のHPで根拠となる資料を示すのです。もちろん、依頼者の同意を得てのことです。先日のブログにおける発言はかなり踏み込んだものでした。事件番号が明記されているのですから、弁護士や新聞記者であれば、過去の事件であっても追跡できます。無論一般市民には無理ですが。その上で、当該事件の本人がアルコール依存症であったことやDVの加害者であったことにまで言及しているのです。普通に考えたら、依頼者の名誉を貶めることになりかねません。
ですが、この記載にまで依頼者が承諾をしているということを、私は誇りを持って示すことができます。決別した過去と今の依頼者が捉え、同じような境遇にある人の模範として事例紹介することの意味を快諾してくれたこと、そして、そういう経過を辿ったことは、HPに掲載されている管財人の意見書に現れています。
つまり、私が紹介した事例は「現実に存在した人」についての事例であることを疑われて当然だから、根拠となる裏付資料も添えるのです。

このブログの内容が、これから弁護士に依頼をしようと考えている人にとって、間違った広告に騙されないための指針になれば幸いです。
裏付のない「成功者の声」は疑ってください。日常生活の中で、それは弁護士を含めた悪徳業者から身を守る術でもあります。また、そういう事件を多数扱うからこそ、私は自分が紹介する事例が市民に同じように受け止められる可能性、むしろ何の根拠もなければ疑って欲しいと考えて、依頼者に情報公開の必要性と匿名性のバランスを説明し、その承諾を求めるのです。