取引履歴不開示の業者に対して

本日のブログは、このブログを定期的に取り上げていただいている方のブログでのコメントに端を発するものです。
不当利得(いわゆる過払い)の返還妨害のために、取引履歴を出さない。
一旦その理由として、廃棄したからという言い逃れを裁判でしたために、自分のウソに縛られて、どんどん意固地になっていくサラ金というのが世の中には居ます。
そうなると、もう何が何でも隠し通さないと、ウソだとばれたときの社会的信用の毀損はきわめて大きいので、社運を賭けて妨害に走ります。
そこをこじ開けようとするのは並大抵のことではないのですが、例によって誰かがうまくやったら、その成果だけに便乗したいという残念な弁護士が業界の大半であり、結果、他人の成果だけを引用しようとして自らに受けた反論には答弁出来ずに、「信義則に反する」と言い続けて、結局他人の成果にまで泥を塗るということをしてきたのです。
弁護士ですらこういう状況ですから、本人訴訟で、取引履歴不開示と闘うなどというのは、老婆心ながらおやめになった方がよろしいのでは?と申し上げるしかないのです。

まず、取引履歴の開示を請求しましたが、うちは10年で廃棄してますので、10年以上前の履歴は出せません。
どの業者を想定しての言及かは知りませんが、まあ、一緒でしょう。いわゆる一定時期以前の取引履歴はもう廃棄してないので、開示も出来ない。
現在問題となっている取引履歴不開示業者の理屈は全部これです。
ここからスタートはそれで良いでしょう。

困るのは次です。
過払いは10年で時効だから、という反論に対し、不当利得の時効が10年だからといって、取引履歴の開示にその理屈が及ぶ訳ではない。
???
意味が分かりません。もうこの時点で本人訴訟としては致命的です。
不当利得の時効は、取引の修了から10年であり、取引履歴の開示は貸金業法19条に基づく場合には、取引終了から3年です。
どちらが短いか分かりますか?反論の中で「不当利得は時効に掛かっているとしても」などと言及した時点で抗弁の自白により裁判は打ち切りです。
もっとも最終取引から10年経過して、なお不当利得をあきらめきれずに本人訴訟をした場合、そのような末路を辿ることで、あきらめがつくということもありますので。
普通は、最後の取引修了から10年未満で、取引履歴の保存期間かどうかの方で問題にする方が多いですけどね。

取引履歴不開示に対しては文書提出命令あるいは証拠保全をする?
取引履歴不開示の業者に対し、証拠保全を掛けた事例というのは、「私」以外には全く聞いたことがないのですが、「取引履歴そのもの」の検証(見ることを言います)を求めての証拠保全は、辞められた方が良いと思います。
もう、社運を賭けて妨害する業者は、証拠保全だろうと、一般に立入出来る所には履歴は置いていません。
そんなところへのこのこ出かけて、裁判所に「やっぱりありませんでしたね」とお墨付きを与えてもらうなど、自殺行為としか言いようがありません。
私が証拠保全を行う時、検証の対象とするのは、取引履歴そのものではありません。これ以上は個人のノウハウに掛かる部分なので、省略しますが、取引履歴そのものを求める証拠保全はもうこれだけこの手法が知れ渡った後にするのは意味がありません(業者も対策を講じている)。

文書提出命令について。
現行、ほとんどの弁護士はこの手法を採らざるを得ません。それでも、文書がないと言い張る業者に対し、文書の存在をどのように裁判所に認定してもらうかについては、裁判官の個性に影響されるところが大きいと言えましょう。
他人の書面を使い回すしか能のない専門家ですら、この部分で玉砕することは多いのです。本人訴訟で文書提出命令は相当ハードルの高いお話だと思ってください。
それでも文書提出命令の申立を行い、却下されてから弁護士に依頼された場合、もうその裁判では文書提出命令の申立は出来ません。一事不再理という言葉を使いますが、何度も同じ裁判を蒸し返すことは認められて居ません。この時点で、勝訴のための重要な手段を失っているのです。

取引履歴不開示を理由に不法行為
文書の提出そのものを求める以上に難しいのです。
最高裁平成17年7月19日判決を根拠にする(一般論としてはそのとおり)のは構いませんが、取引履歴が「あるのに出さない」の部分の立証は文書提出命令と全く同じです。その上に、相手方の主観的要件と損害、及び損害との因果関係を立証する分、過払い請求の中で文書提出命令を求める以上に立証する事項が多くなります。

それでも本人訴訟をされたいという気持ちに私がどうこう申し上げることはありませんが、ご自分で裁判を始めて、行き詰まったところで、弁護士に依頼されればよいとのお考えは私はお薦めしません。
無論、今は弁護士も経済的に窮状にありますので、着手金がもらえるなら引き受けるという弁護士もおられると思いますが、ご自分で裁判を始めて、上記のとおり、自分で裁判の方法を全部踏みつぶしてから、まず裁判に負けることになりますが、それでもよろしいですか?と説明を受けて、それでもお金を払って依頼されますか?

以上の通りです。別に上記のやり方をされようとする方はご自分のリスクでそうされるので、構わないと思います。
ただ、その方のブログに掲載されていた上記の方法は、私が裁判をするときの方法とは似ても似つかないものですので、そのことについてだけ言及しておきます。
私のHPの感想の後で、自分で考えてみると言及された上での上記の掲載だったので、私のHPに上記のようなことが書いてあるかのように素人さんが受け取ると、被害が拡大するので、注意書きだけは添えて欲しいと、少なくともそこに掲載されている方法は、私は否定するけど、それでも自分のリスクで利用したければ利用するという形にして欲しいと言うことです。
無論、ご自分で裁判をされて行き詰まった後に依頼をされても、私は依頼者と紛争になるのが困るので、お引き受け出来ませんが。

追伸
本ブログが想定している某非専門家の自分で訴訟をするというブログですが、
つっこむところは山のようにありますが、一応あと一つだけ。
証拠保全というのは、正式名称を「訴訟前の証拠の検証の申立手続」と言い、裁判をしてからでは証拠が隠匿・隠滅されるおそれがあることを要件とする「裁判前」の手続です。
裁判をしてから、証拠保全の手続というのはありません。(ちゃんと裁判手続内で検証の手続というのがありますが、相手方の居るところで申し立てるわけですから、相手方は前もって準備して迎えてくれる訳です。何の意味もないことは分かりますね)
前に一度別件で控訴審の弁論前なら条文の要件には合致するじゃん、と受訴高等裁判所に申し立てて見ましたが「だめ」と言われました(一応これはサラ金関係ないです)。
なので、裁判になっても出してくれないので、証拠保全、などという方法はありませんので。自分で裁判をしてから、行き詰まって、証拠保全からお願いします、などと弁護士に依頼しないように。
弁護士が唖然としてしまいます。
無論、ご自分で証拠保全の申立をして行き詰まって弁護士に依頼しても、もう証拠保全など出来ないばかりか、失敗した結果を相手方に引用されるという、それこそ、敗戦処理投手みたいな裁判を引き受けて下さいみたいな話になりますね。

本当に、履歴を全部出さない業者なんて有名処では、オリコ、セゾン、レイク、ニコスな訳ですから、本人訴訟にするのは辞めて、最初から、「自称過払いの第一人者」のクレサル以外の弁護士に依頼することです。
悪いことは言いませんから。